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  • 第72回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出された本作は、上映されるやいなや話題をさらい、主演のエミリー・ビーチャムに女優賞をもたらした。
    バイオ企業の研究室に務めるシングルマザーのアリスは、人を幸せにする、真紅の美しい花の開発に成功する。アリスは、自らの息子の名前にちなんで“リトル・ジョー”と名付けるが、開発されたばかりのその花は、成長するにつれ人々にある変化をもたらす。アリスはその原因が“リトル・ジョー”の花粉の影響かもしれないと疑い始めるが……。
    真紅の花“リトル・ジョー”を中心に、ヴィヴィットな色を基調とする本作は、どこかお伽話のように描かれる日常に不穏な空気が漂い、得体の知れない耽美な世界に観るものを誘う。SF的な題材を扱ったスリラーながら、懐かしい怪談の匂いさえする。唯一無二の世界観は、映画ファンなら必見だ。
    監督を手掛けたのは、オーストリア出身のジェシカ・ハウスナー。カンヌ国際映画祭ある視点部門で上映された『Lovely Rita ラブリー・リタ』(01)で注目を集め、シルヴィー・テステュー、レア・セドゥらフランスの実力派俳優を揃えた『ルルドの泉で』(09)では第66回ヴェネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞するなど高い評価を得ている気鋭の女性監督だ。長編5作目となる本作は満を持してカンヌのコンペティション部門に選出された、彼女の最高傑作といえる。
  • 遺伝子組み換えという科学の力によって人工的に“幸福感”を得ようと開発された美しい花。それは、一見悩みのない至福の世界へ誘う特効薬のように思えた。だが、脳に作用するその花粉は、目には見えないが確実に人間に侵食し、心を支配していく。
    最先端の医学、遺伝子工学からインスピレーションを受けた物語は、遺伝子組み換え食品などが社会問題として取り沙汰される昨今、“あり得るかもしれない”お伽話だ。
    「私たち人間には、“奇妙なモノ”が突然生まれ、親しんでいたはずの人が突然、別人に思える。身近だと感じていたものほど遠く離れてしまうことがあります。本作は、人の中に存在するその“奇妙なモノ”の比喩といえるでしょう。人を変えてしまう“リトル・ジョー”によってそれは具現化されています」とハウスナー監督はコメントしている。
    “リトル・ジョー”によって変わっていく同僚たち、そしてなによりも最愛の息子ジョーの変化によって次第に追い詰められていくアリスの姿は、人間同士のコミュニケーションが希薄になった現代の不安を体現しているといえるだろう。一方で、サイエンス・スリラーを軸にしながらも、子育てに専念できず罪悪感を抱くシングルマザーであり、新しい恋愛に踏み込む余裕がないアリスは、自己実現=仕事とプライベートの間で板挟みとなるリアルな現代女性の肖像でもある。演じたのは、エミリー・ビーチャム。ドラマ等でキャリアを築いてきた英国の実力派だが、本作でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞したことにより、国際的に脚光を浴びた。ディズニーの名作『101匹ワンちゃん』の実写映画化『Cruella(原題)』への出演も決定している。また、アリスに好意を持つ同僚のクリス役には、『007』シリーズの“Q”役でも知られるベン・ウィショー。そして、“リトル・ジョー”の危うさにいち早く気付き、アリスに忠告する同僚のベラ役を、『インティマシー/親密』(00)で第59回ベルリン国際映画祭女優賞を受賞したケリー・フォックスが演じている。ハウスナーにとって初の英語映画を、しっかりと実力派俳優が顔を支えた。
  • “リトル・ジョー”が咲き、花粉が散布するときにしかからない音楽など、セリフ以外の絶妙な演出が絶賛されている本作。音楽を手掛けたのは、ハウスナー監督が「最も影響を受けた映画作家」と公言している実験映画で知られるマヤ・デレン監督の音楽で知られ、デレンの3番目の夫でもあった日本人作曲家、故・伊藤貞司。和太鼓や琴など和楽器を使った雅楽と西洋のクラシックを融合した音楽は、“怪談”という言葉を彷彿とさせる、おどろおどろしくも怪しい世界へ観客を誘う。
第72回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出された本作は、上映されるやいなや話題をさらい、主演のエミリー・ビーチャムに女優賞をもたらした。
バイオ企業の研究室に務めるシングルマザーのアリスは、人を幸せにする、真紅の美しい花の開発に成功する。アリスは、自らの息子の名前にちなんで“リトル・ジョー”と名付けるが、開発されたばかりのその花は、成長するにつれ人々にある変化をもたらす。アリスはその原因が“リトル・ジョー”の花粉の影響かもしれないと疑い始めるが……。
真紅の花“リトル・ジョー”を中心に、ヴィヴィットな色を基調とする本作は、どこかお伽話のように描かれる日常に不穏な空気が漂い、得体の知れない耽美な世界に観るものを誘う。SF的な題材を扱ったスリラーながら、懐かしい怪談の匂いさえする。唯一無二の世界観は、映画ファンなら必見だ。
監督を手掛けたのは、オーストリア出身のジェシカ・ハウスナー。カンヌ国際映画祭ある視点部門で上映された『Lovely Rita ラブリー・リタ』(01)で注目を集め、シルヴィー・テステュー、レア・セドゥらフランスの実力派俳優を揃えた『ルルドの泉で』(09)では第66回ヴェネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞するなど高い評価を得ている気鋭の女性監督だ。長編5作目となる本作は満を持してカンヌのコンペティション部門に選出された、彼女の最高傑作といえる。
遺伝子組み換えという科学の力によって人工的に“幸福感”を得ようと開発された美しい花。それは、一見悩みのない至福の世界へ誘う特効薬のように思えた。だが、脳に作用するその花粉は、目には見えないが確実に人間に侵食し、心を支配していく。
最先端の医学、遺伝子工学からインスピレーションを受けた物語は、遺伝子組み換え食品などが社会問題として取り沙汰される昨今、“あり得るかもしれない”お伽話だ。
「私たち人間には、“奇妙なモノ”が突然生まれ、親しんでいたはずの人が突然、別人に思える。身近だと感じていたものほど遠く離れてしまうことがあります。本作は、人の中に存在するその“奇妙なモノ”の比喩といえるでしょう。人を変えてしまう“リトル・ジョー”によってそれは具現化されています」とハウスナー監督はコメントしている。
“リトル・ジョー”によって変わっていく同僚たち、そしてなによりも最愛の息子ジョーの変化によって次第に追い詰められていくアリスの姿は、人間同士のコミュニケーションが希薄になった現代の不安を体現しているといえるだろう。一方で、サイエンス・スリラーを軸にしながらも、子育てに専念できず罪悪感を抱くシングルマザーであり、新しい恋愛に踏み込む余裕がないアリスは、自己実現=仕事とプライベートの間で板挟みとなるリアルな現代女性の肖像でもある。演じたのは、エミリー・ビーチャム。ドラマ等でキャリアを築いてきた英国の実力派だが、本作でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞したことにより、国際的に脚光を浴びた。ディズニーの名作『101匹ワンちゃん』の実写映画化『Cruella(原題)』への出演も決定している。また、アリスに好意を持つ同僚のクリス役には、『007』シリーズの“Q”役でも知られるベン・ウィショー。そして、“リトル・ジョー”の危うさにいち早く気付き、アリスに忠告する同僚のベラ役を、『インティマシー/親密』(00)で第59回ベルリン国際映画祭女優賞を受賞したケリー・フォックスが演じている。ハウスナーにとって初の英語映画を、しっかりと実力派俳優が顔を支えた。
“リトル・ジョー”が咲き、花粉が散布するときにしかからない音楽など、セリフ以外の絶妙な演出が絶賛されている本作。音楽を手掛けたのは、ハウスナー監督が「最も影響を受けた映画作家」と公言している実験映画で知られるマヤ・デレン監督の音楽で知られ、デレンの3番目の夫でもあった日本人作曲家、故・伊藤貞司。和太鼓や琴など和楽器を使った雅楽と西洋のクラシックを融合した音楽は、“怪談”という言葉を彷彿とさせる、おどろおどろしくも怪しい世界へ観客を誘う。
バイオ企業で新種の植物開発に取り組む研究者のアリス(エミリー・ビーチャム)は、息子のジョー(キット・コナー)と暮らすシングルマザー。
彼女は、見た目が美しいだけでなく、特殊な効果を持つ真紅の花の開発に成功した。その花は、ある一定の条件を守ると、持ち主に幸福をもたらすというのだ。その条件とは、1.必ず、暖かい場所で育てること、2.毎日、かかさず水をあげること、3.何よりも、愛すること。会社の規定を犯し、アリスは息子への贈り物として花を一鉢自宅に持ち帰り、それを“リトル・ジョー”と命名する。花が成長するにつれ、息子が奇妙な行動をとり始める。
アリスの同僚ベラ(ケリー・フォックス)は、愛犬のベロが一晩リトル・ジョーの温室に閉じ込められて以来、様子がおかしいと確信し、原因が花の花粉にあるのではと疑い始める。アリスの助手、クリス(ベン・ウィショー)もリトル・ジョーの花粉を吸い込み、様子がいつもと違う。何かが少しずつおかしくなっていくその違和感は、果たしてこの植物がもたらしたものなのか…。
エミリー・ビーチャムは、Peter Mackie Burns監督作「DAPHNE」の演技で英国インディペンデント映画賞、ロンドン映画批評家協会賞の主演女優賞にノミネートされた。エミリーの最新作は、ジュリアン・ジャロルド監督作「SULPHUR AND WHITE」だ。その他の出演作には、コーエン兄弟監督作『ヘイル、シーザー!』(16)、米AMCが製作を手掛けたTVシリーズ「バッドランド ~最強の戦士~」(15-19)がある。
映画と舞台両方で活躍しているベンは、多くの賞を受賞している俳優であり、最近ではBBCのTVミニシリーズ「英国スキャンダル 〜セックスと陰謀のソープ事件」(18)の演技で第76回ゴールデングローブ賞ドラマ部門助演男優賞を受賞している。映画出演作には、『パフューム ある人殺しの物語』(06)、『情愛と友情』(08)、『ブライト・スター ~いちばん美しい恋の詩(うた)~』(09)、『クラウド アトラス』(12)、『追憶と、踊りながら』(14)、『ロブスター』(15)、『パディントン』シリーズ(14、17)『メリー・ポピンズ リターンズ』(18)、がある。また『007』新シリーズのQ役も演じている。最新作はアーマンド・イアヌッチ監督作『THE PERSONAL HISTORY OF DAVID COPPERFIELD(原題)』である。
ケリー・フォックスは、ジェーン・カンピオン監督作『エンジェル・アット・マイ・テーブル』(90)に主演し、国際的に名を知られるようになった。またダニー・ボイル監督作『シャロウ・グレイブ』(94)にも出演している。ハニフ・クレイシの著書を映画化したパトリス・シェロー監督作『インティマシー/親密』(00)の演技で、ベルリン国際映画祭最優秀主演女優賞を受賞。その他の出演作に『ウェルカム・トゥ・サラエボ』(97)、『ブライト・スター ~いちばん美しい恋の詩(うた)~』(09)、『ホールディング・ザ・マン-君を胸に抱いて』(15)などがある。
ジェシカ・ハウスナーは1972年、オーストリアのウィーンで生まれた。The Film Academy of Viennaで監督業を学び、在学中に映画賞受賞作の短編『FLORA』(96)、『INTER-VIEW』(99)を制作した。
2001年、長編初監督作『Lovely Rita ラブリー・リタ』(01)がカンヌ国際映画祭ある視点部門に出品され、二作目の『Hotel ホテル』(04)も再びカンヌ国際映画祭ある視点部門で上映された。2009年、『ルルドの泉で』がヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞。2014年には『AMOUR FOU(原題)』が再びカンヌ国際映画祭ある視点部門でプレミア上映された。
『リトル・ジョー』はジェシカ・ハウスナー監督の長編第5作目であり、初の英語作品である。